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福岡県 秋吉 亮 |
1.はじめに
本校の総合的な学習の時間では,「竹」を素材にした「ものづくり」の活動を3〜6年生に年間35時間配当している。
本活動のねらいは,各教科での学びのベースとなる力を育成することにあり,特に,本校が継続的に研究に取り組んできた理科教育との連携を重視している。
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2.育つ力
本校では,『ものづくり』を段階的計画的に経験させることにより,知覚運動系の発達を促して『手の知恵』を育てるとともに,粘り強さや協力性などの『こころ』をも育てようとしている。
左は,『手の知恵』と『こころ』に着目して,子どもたちに培おうとしている力の一覧である。ただ単に楽しい製作活動を経験するだけではこれらの力は育たない。そこで,本校では,以下のような手だてにより,これらの力の獲得をめざしている。
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3.力を培う手だて
(1) |
発達段階に即したカリキュラムの作成→操作技能・耐性 |
(2) |
作り方の説明方法の工夫→観察力・集中力 |
(3) |
自己責任による意志決定→成就感・自己効力感 |
(4) |
現物合わせによる量の感覚の獲得→調整力 |
(5) |
協力なしに完成しない活動プログラム→協力性 |
(6) |
GTの活用と地域への発信→集中力・自己効力感 |
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4.実践事例
4年 「竹馬を作ろう・遊ぼう」
4年生は,4月から様々な道具を使い,理科学習との関連を考えた空気鉄砲・水鉄砲作りなども経験してきた。4年生での「ものづくり」の最後には,今まで作った中で一番大きく,より緊密な協力と様々な技能が必要となる「竹馬作り」を設定した。
まず材料の真竹を選んで2本ずつ組にし,自分の身長に合わせて長さを決め,力を合わせて切る。この時に,量の感覚を獲得させるために定規などは使わせず,「同じくらいの太さの竹」「二組の節が合うもの」「身長とあと一節」という表現で材料を選ばせ,長さを決めさせた。また自己責任による意志決定を促すために「先生,これでいいですか?」という問いには「あなたはどう思う?」「友だちのやり方と比べてみたら」のように答え,教師からの価値付けを控えるように心がけた。
ステップの取り付けなどの細かい作業の前には,集中力・観察力の向上と大切な事柄を判断してメモをとる訓練のために,作り方の説明の際にメモをとらせた。
協力性を高めるために,ステップの取り付けは一人ではできない構造にした。ここは2〜3人が協力して作業しなければならない。
子どもたちは,グループ内で順番を決め,互いに手伝い合うことで乗り越えていった。またステップを支える棒の長さは現物を組み立てながら決定しなければならない。短く切りすぎて,何度か失敗を繰り返す子もいたが,自分で調整してちょうどいい長さを見つけ出し,成就感・満足感・達成感を味わうことができた。 こうして,自分の課題を次々に克服しながら完成させた竹馬。子どもたちの自己評価からは,技能面の成長はもちろんのこと,「最後までやりぬく力」「協力する力」などのこころの成長を自覚している子が多数を占めた。「ものづくり」を通して,学びのベースとなる「こころ」を育む取り組みの有効性を確認できた実践であった。
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6年 「門松を贈ろう」
6年生は「ものづくり」の最後に「門松作り」に取り組んだ。より協力性を高めるため,グループによる共同製作とし,出来上がった門松は,地域の出身幼稚園や保育所・中学校・市民福祉センター・駐在所などへ感謝を込めてプレゼントする。縁起物として飾っていただくために,よりよいもの,本物を作ろうという意識を高め,製作への集中力・技能の向上を図った。校区内の植木屋さんにもG.Tとして参加していただき,本物志向を高めるとともに,職業人の技術の素晴らしさ,働くことへの意識醸成などもねらいとした。
裏山からの竹の切り出しから始め,よりよいものをと何度もやり直しながら,作り上げ,リヤカーで配達した。届け先で作品を賞賛され,感謝されたことが子どもたちのこころに単なる満足感を越えた「自己効力感」を芽生えさせた。「自分も人のために役立てる」自信と協力することの素晴らしさの実感が今後のあらゆる学びの場面で生きてはたらくことを期待したい。
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