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りんく


東京都 吉川 博史

HPC液晶の活用

この学習の導入には、鏡を使い、太陽の光を反射させ、的に当てる活動が考えられる。児童の多くは反射した光に関心をもち,光が当たった場所が明るくなることに気付く。そして、反射させた光を重ね合わせるなどの活動を始める。しかし、光が当たると物が暖まることにはあまり関心をもたない。

そこで,温度によって色を変えるHPC液晶を取り付けた的を作り,日光によって物が暖められる様子を色の変化で見ることができるようにした。児童は,液晶の色の変化に興味をもち,日光の当たっているところをさわったり,直接肌に日光を当てたりして,体感した暖かさと液晶の色の変化とを比較しながら調べていた。その結果,「日光は明るさだけでなく,暖かさももっている」「日光を当てた場所によって暖かさが違う」といった見方や考え方をもつ児童が多く見られるようになった。
美しい輝きを示すHPC液晶の色変化については,強い興味を示し,不思議なこととしながらも、「温度の違いを調べるのに便利な物」ととらえる児童が多かった。

写真1 光の的当て

写真2 液晶の色が青から緑に 写真3 2枚の鏡で光を重ねる


導入時の活動を設定する際に、次のことに留意した。
楽しい活動を通して現象をとらえる
光の進み方や光が当たった物の様子が分かりやすい
いくつかの気付きがもてる
とらえた現象から疑問や解決したい問題がもてる
光を反射させる物には、鏡のほか、色付きの透明アクリル板や厚紙を使用した。それらで光のはね返り方を調べたり、物に当たった光の様子や光が当たった物の様子を調べたりした。調べたことから、光の進み方や物の性質についての問題を見いだすようにした。

写真4 鏡やアクリル板で調べる

学習活動の工夫

児童一人ひとりが学習のめあてをもてるような活動から入り、学習の中心ではそれぞれのめあてに向かって自分なりの方法で調べていく活動により学習計画を組み立てた。さらに,学習活動の発展として児童の工夫による「楽しい活動」を設定した。
3学年の児童では、問題解決の活動がそれぞれ完結したものになりやすく、活動のつながりや発展を期待することは難しい。そのため、活動と活動のつながりの場面で、情報交換や新しい問題の提示など、次の活動に対する意欲をもたせる教師の指導や支援が必要である。また、調べる手だてを見つけられない児童には、方法や手順を提示するなどの工夫も必要である。

写真5 記録カードに記入

HPC液晶

ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxy Propyl Cellulose)は、かぜ薬など薬剤を錠剤に固めるために使われ、人体に害のない安全なものである。
HPCを水に溶かすと、ある濃さの時、液晶の状態になる。液晶の状態とは、液体と固体の中間の状態をいい、液体でありながら分子の向きにきまりがある。HPCの分子は、棒のような形をしていて、液晶状態では分子の向きが少しずつずれて図のように層を作る。光があたると、分子の向きの平行なところと垂直なところでは光の進み方がちがうため、光の散乱・回折がおこり、特定の波長の光が散乱してその波長の色を示す。散乱する波長は、分子の向きが平行になる間隔と光の入る角度によって決まる。また、平行になる間隔は、濃さや温度によって変わる。


HPC液晶の作り方

HPCは、60%〜70%ぐらいの濃さの水溶液にすると数日で液晶状態になる。フィルムケースで作るが、ガラス管やアクリル管にエポキシ系接着剤でしっかりと密封すれば何年でももつ。
(65%の場合)
(1) 準備するもの
・HPC・フィルムケース(透明)・薬さじ ・電子てんびん・竹串・ビーカー・スポイト ・精製水(または水道水を沸騰させて冷ましたもの)
(2) 手順
1. 電子てんびんでフイルムケースにHPCを6.5gはかり取る。
2. 精製水(または湯冷まし)を加え、合わせて10gにする。
3. 竹串でHPCと水がなじむようにする。かき混ぜすぎると泡ができてしまう
4. フィルムケースにしっかりふたをし、一日2,3回ひっくりかえして濃さを一定にする。数日で水に全部溶け、きれいな色を示す。
5. 注射器でガラス管にHPC液晶を注入する。液晶は粘性が高いので、針は使わない。
6. ガラス管の口をエポキシ系接着剤で閉じる。

写真6 HPC液晶


写真7 液晶作り