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神奈川県 鈴木 康史

1.はじめに

本校では,問題解決の資質・能力(「学びを創りだす力」と呼んでいる)を育成するために,「時間・空間・人間(じんかん)」の視点で,子どもが自ら学びを創りだしていくための手だてを構想している。子ども自らが問題解決学習を進めるに当たって,「予想→検証→考察」はかなり重視され,理科を主として研究している教師でなくても,子どもと共に価値ある学びを構成していることが多い。しかし,指導要領の目標においても「自ら見いだした問題を・・・」とされているが,子ども自ら問題を見いだすことはなかなか実現されていない。また,子どもが実感を伴った理解をするためには,観察,実験などの直接経験が重要であると考える。
ここでは,街の中では光害がひどかったり,観察を夜に自宅で行うことになったりするため,観察活動を敬遠されがちな4年「月と星」の内容を扱う。


「豊かに自然とかかわる場」を工夫する手だてを構想する視点
時間
・ 自然の事象と十分にかかわる時間をつくる
・ 自然の事象に触れるタイミングを図る
・ 他教科や単元間の関連を図って時期を工夫する
空間
・ 身近な地域の自然や生活を活かして教材化を図る
・ 問題意識を誘発する教材を工夫する
・ 活動に適した場所を工夫する
人間(じんかん)
・ 地域の施設や人材の活用を図る
2.時間の視点から

子どもが追究していける問題を見いだすためには,事象と触れるタイミングは重要である。特にA区分やC区分の内容では,変化が明らかなときや推論しやすい状況のとき,自然の力が顕著に現れているときなど,よりタイムリーであったり,タイミングが合ったりする事象とふれあう必要がある。4年C区分の内容にかかわる自然事象は,天体も水も,目の前にある事象を子どもが意識していないことが多い。視点をもって接していないで,子どもが問題を見いだすことが難しい。
また,月齢と子どもの問題意識を探ってみた。学習前の子どもに昼間の月を見た経験を問うと,午前8時・・・3割,午後1時・・・1割,午後4時・・・4割であった。


そこで,朝の月(下弦)ではなく,意外性の高い正午ごろに月の出となる午後の月(上弦)を子どもが発見する機会をつくり,全員で昼間見えることに疑問をもった。複数回見る中で,動きのきまりの問題が生まれ,「太陽に似た動きではないか」という今後の動きの見通しと,観察の仕方の見通しができた。夕方,帰宅しても学校での午後の観察の延長として行うことができた。ここで,おおよそ南中すぎまでの月の動きを観察できてしまう。学校にいる時間帯で太陽の動きを調べるのと同じ動きを確かめられるので,観察後は太陽の動きと月の動きの類似性を十分見いだすことができた。

月であれば,都市部でも見ることができる。また,高層建築物も遮蔽物としてではなく地上目標物と考えれば,積極的に活用することができる。まず,学校と言う共通の場で学習の見通しが十分もてれば,個々の自宅での観察活動はスムースに行われる。
さらに,上弦の月から入ることにより,しばらくは月明かりで星はさらに見難い時期となるので,観察が月の動きに集中する。一方で,明るく目立つ星の存在に気付き,月を数回観察終える頃に子どもが見いだした問題をもって,星の観察に自然と移行した。

3.空間の視点から

自宅での観察が活性化するためには,学校での学び合いによる結果や考察の共有が重要である。それぞれの観測地点が違うので,方位や高度で表現して月や星の位置を表すが,4年生で方位概念が十分についている状況は少ない。また,曲面の空間を平面でそこで,ビーチパラソルを地域グループごとに用意し,ドーム状空間の中で話し合いを行わせた。半球面であり,指先1本で動きを表現できるスケールなので,月や星の動きを表現しやすく,共通理解もよく図られた。パラソルの下での話し合いを元に再び観察してみようという意欲が高まり,繰り返し観察した。

4.人間の視点から

関心が高まってきた子どもたちに,社会教育施設を訪れたり,ゲストティーチャーとして迎えたりして,小型天体望遠鏡による観察会を行った。星雲・星団は期待できない都市部でも,月面,木星や土星などの惑星,明るい二重星などは,十分観察できる。クレーターや土星の輪,色の違いの特徴のある二重星(白鳥座β)を観察して,より関心をもって天体を観察するようになった。

5.まとめ

最近,プラネタリウムは減少している。疑似体験するにはよい空間だが,やはり直接観察して実感したい。パソコンシミュレーションも発達してきているが,お目当ての星座の位置検索や夜中など子どもが観察できない時間帯の情報を得るためのものとし,見通しを十分にもって直接観察を重視したい。また,宿泊学習においては天体観察の時間を設け,ゆったりと時間をかけて星空を眺めることも取り入れている。
月と星の内容は,太陽の動きと関係付けをしながら実際に天体の動きを追うことができれば,すべて自ら見つけ出すことができるものである。星の動きを太陽の動きと関係付けてきまりを見いだすところまで,発展的な学習や総合的な学習の時間として,子どもが自ら問題解決していくことも可能となる。また,従来北の空の星の動きを「時計と反対回り」としてきたことが多かった。しかし,太陽の動きとの関係付けていくと,子どもは「北の空の星も,東から出て南側を通って西に沈む」と表現し,北極星の下方通過については「西から東に戻るための動き。他の星も地面の下で同じように動いている」と表現した。
都市部にも生かせる自然は豊かにあるという視点で,観察,実験などを工夫するように心がけている。