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りんく


静岡県 村田一広

1.【寒天って,なんだろう?】

〔寒天〕と言われてピンとこない人でも,〔寒天ゼリー〕と言われれば,あれかって思いつく人もいますよね。
そうです。〔ゼリー〕をつくる材料です。きっと,みなさんの中には,私よりも詳しい,寒天ゼリー歴数十年といった方もいらっしゃることでしょう。
ゼリーのように固めるには,〔寒天〕の他に,〔ゼラチン〕もあります。好みによって,〔寒天〕よりも〔ゼラチン〕の方が扱いやすいという人もいます。


2.【寒天とゼラチンの違いは,なんだろう?】

〔寒天〕は,海の中に生えている天草という植物からつくられます。天草は,別名で〔寒天草〕〔ところてん草〕〔マグサ〕などと呼ばれています。私が勤めている小学校の子供たちの中には,海に潜って天草採りをしている子もいます。また,総合的な学習で,天草について研究したり,ところてんつくりに挑戦したりしています。そんな,身近な草なのです。他方,〔ゼラチン〕は,動物の皮や骨から作られます。これは,自分たちでつくろうとしても難しいものです。
ゼリーをつくる時,〔寒天〕では40℃程度で固まり始めますが,〔ゼラチン〕では冷蔵庫に入れて冷やさないと,なかなか固まりません。したがって,今回のように時間の限られている場合は,〔寒天〕がお勧めです。


3.【地層って,何だろう?】

いきなり,〔地層〕と言われても,小学生には,わかりにくいかもしれません。がけや切通しなどで,砂や小石や火山灰などが層のように広がっていて,しましま模様になっているものを見たことがないでしょうか?そのように層が重なってできているものを〔地層〕と呼んでみましょう。
今回は,このしましま模様を,砂や小石や火山灰ではなく,〔寒天〕と〔色チョーク〕を材料にしてつくってみます。


4.【つくり方は?】

≪その1≫材料集め
まずは,材料集めです。今回は,すべて準備してあります。
●寒天(粉末寒天粉4g×8)
●色チョーク(赤,青,黄,緑のパチンコ大のもの)
●水(500ml×4)
実験用具は,以下のものです。
鍋,おたま,ガスコンロ,消しゴム(傾きをつけるもの),透明ストロー(ボーリングするもの)
ビーカー(500mlを計るためのもの,計量カップでもよい),木づち,割りばし

≪その2≫つくる手順
(1) 容器を準備する。
斜めの地層をつくる時は,容器の下に消しゴムなどを入れ,セロテープで貼り付けます。
(2) 色チョークを細かく砕く。
4色チョークを,それぞれビニール袋の中に入れ,木づちで軽くたたき,できるだけ細かく砕きます。
(3) 寒天を溶かす。
水500mlと粉末寒天2袋(4g×2)を鍋に入れ,割りばしやおたまでかき混ぜながら溶かす。沸騰したら,そのまま2分程度煮る。
(4) 色をつける。
鍋を火から下ろし,色チョークを粉にしたものから1色を選び,中に入れ,よくかき混ぜる。
(食べることのできるゼリーをつくる場合には,果汁100%のジュースや,コーヒー,牛乳などで着色してください。その時は,最初の水の量を少なくしてください。また,しっかりと固めるために粉末寒天を普通の量の2倍入れてありますので,調整してください。
(5) 容器に流し込む。
必要な量だけ,おたまですくい,容器に流し込む。
加熱したものをそのまま容器に移すと,耐熱性でない容器は,変形します。
(6) 層をつくる。
この作業を,後3回繰り返し,4つの層をつくります。
最後のもの(4回目)は,傾きをつけていた消しゴムなどを取り外し,容器いっぱいまで寒天溶液を入れる。あまり多く入れすぎると,ふたがしまらなくなるので注意してください。
次の層をつくるために,寒天溶液を流し込む場合,前のものがしっかりと固まっていることを確かめてください。固まっていないと,形がくずれてしまいます。
また,流し込む寒天溶液の温度が,低くなりすぎると,層と層がしっかりとくっつかない時があります。

※簡単に済ませるには,最初から水2リットルに粉末寒天32g(4g×8)を溶かして熱し,4つの鍋に移し,色チョークを粉にしたものを色ごとに分けて中に入れ,かき混ぜ,4色の溶液をつくっておくと便利です。寒天溶液は,固まってしまっても,加熱すれば,また簡単に溶けます。容器に流し込んだものが固まったのを確かめてから,次に入れる色のものを選び,加熱して溶かし,流し込んむといった作業を繰り返せば,層をつくることができます。

(7) 寒天地層を取り出す。
最後の寒天が固まったら,容器を逆さまにして,寒天地層を取り出します。取り出しにくい場合は,容器をお湯などで温めると,取り出しやすくなります。今回使用している容器は,簡単に取り出すことができます。取り出した後,透明ストローをさしこみ,口をふさいで引き抜くと,その部分だけ取り出すことができ,ボーリング資料としても利用できます。
参考文献
井上宗弥,小澤大成,村田守,西村宏,山下伸典,奥村清:『食品を用いた教材開発――空間把握能力を向上させる寒天地層モデル――』,鳴門教育大学学校教育センター紀要 第11号,1997.