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埼玉県 高木 稔先生

1.はじめに

現在の教育の中で言われている「豊かな心を育む教育」や「環境教育」、「科学的な思考力の育成」を推進するためにも、理科教育の果たす役割は大きい。本校は、埼玉県の西部に位置し、秩父山系に接する里山である。いかに、自然環境には恵まれても、生徒が思考活動をする上で必要な過去の自然体験活動が少ないのが現状である。“意識しなければ見えてこないもの、気づくためには、意識していなければならないもの”がある。より多くの身近な生物を直接観察し、生物の多様性に興味・関心を持ち自然の中で巧みに生きていることに気づかせながら、身近な自然を知ることが大切であると考えた。

2.研究のねらい

(1) 身近な生物の観察や、からだの仕組み、生態を探究することや、自然への関心、環境問題の意識を高めるだけではなく、人間と生物との関わり、自然界の循環や人間としての役割を考えさせる。
(2) 生徒たちが、魚釣りや川で遊んだりしながらでも、そこに生息する生物たちを見つけるだけで、水質やさらには環境汚染の状況が簡単に把握できることを理解させる。
(3) いつまでも身近な自然が残されていくために、これからの私たちが利便さだけを考えず、いかに人間生活と自然環境の保護が両立できるか、その手立てを真剣に考えていくことの大切さに気づかせる。
(4) 自然が破壊されている現状を見せることから環境保全の学習をするのではなく、ごく身近な豊かな自然の素晴らしさに気づかせながら、環境保全の意識を喚起させる。

3.研究の方法と内容

(1)授業内での取り組み
「総合的な学習の時間」「選択理科」「理科の授業」で実施している
ア. 理科室経営(生物飼育)
身近な生物への興味・関心が高まるように学校の近くに生息している生物を中心に飼育した(水槽12個)
・水生生物(地域や学校裏の川・プール等)
ハヤ、オイカワ、ギンブナ、サワガニ、サンショウウオ、ザリガニ、ウズムシ、タイコウチ、ミズカマキリ、ヤゴ、トビケラ、カワゲラ、カゲロウ、ヘビトンボ、イモリ、ナマズ、スジエビ、カワエビ、タニシ、カワニナ、モノアラガイ、サカマキガイ、マツモムシ、ヒラタドロムシ
・生徒が家庭から持ってきたもの
キンギョの卵(稚魚)
・その他
カブトムシ(の幼虫)、ウスバカゲロウの幼虫(アリジゴクの幼虫から成虫)、マムシ、アオダイショウ、ジムグリ、ヤマカガシ、スズメバチ及びその巣、タマムシ等、その他多くの甲虫類。主に甲虫類は、飼育後標本作製を行なった。

(2)授業外での取り組み
【学習環境の整備】

ア. 河川生物採集、観察。
イ. 水生生物採集、調査。
・指標生物による水質調査
ウ. 「総合的な学習の時間」での環境教育「水・電気・ゴミ」について家庭や自分の地域について調査・研究をした。全校生徒を各地区毎(7地区)の縦割りにし、それぞれ最低3グループに分けて専門に調査・研究を実施した。
・家庭排水の汚染度  ・節電の方法  ・ゴミの再利用  ・風力発電  ・地域の川の汚染調査  ・生ゴミの肥料化  ・水の汚れの生物への影響の度合 等々

理科教師が理科室に常駐し、調査・実験するグループへ支援を行なった。



イ. 「野鳥観察コーナー」の設置
校舎のすぐ裏に都幾川が流れており、野鳥も多く観察することができる。そこで豊かな自然を実感させるために多目的ホール(スペ−ス)を利用して、観察コーナーを設置した
・利用方法−休み時間等、自由に観察することができるように常設してある
・備 品−双眼鏡16台・単眼鏡(スコープ)3台・鳥類図鑑
・管理方法−環境委員会が管理を担当
・今までに確認できた鳥の種類
オオタカ、コサギ、アオサギ、ゴイサギ、カワセミ、カルガモ、カワウ、ヨシキリ、キジ、ホトトギス

4.実践の成果と課題

・理科室や野鳥観察コーナーでの経験から日常生活でも興味を持って身近な生物を見ることができるようになった。
・「水・電気・ゴミ」を家庭、地域について調査・研究をしていく中で、課題を見つけ、科学的に実験を繰り返し、論理的に考察し、結論を出そうとする力が身についてきた生徒が増えてきている。
生徒に自然を気づかせられる理科教師の姿勢と環境教育に関する幅広い知識と人間性、そして目指す生徒像に近づけるためにさまざまな仕掛けができる教師自身の意欲と力量を高めていくことが必要である。